犬・猫の肥満細胞種

犬の肥満細胞腫

犬の肥満細胞腫とは?

犬の肥満細胞腫とは?

様々な形で全身に発生するが、皮膚、皮下組織での発生が最も多い。犬の皮膚悪性腫瘍で最も発生が多いと報告されています。細胞診やコア生検(Tru-cut生検針)では周囲組織との関連性を評価出来ないことがあり、組織生検を用いた分類が確実です。

以前は犬の皮膚肥満細胞腫は発生部位による予後に差があると考えられていました。実際に「包皮、爪床」に発生したものは予後が悪いとされていましたが、現在では発生部位よりも組織学的な悪性度が影響すると考えられています。

治療

皮膚肥満細胞腫は外科手術による摘出が最も有効の手段です。 肥満細胞腫の腫瘍細胞が持つヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン等により、腫瘍の周囲が赤くなったり、腫れたりすること(ダリエ徴候と言います。)、さらに深刻な場合は、気道粘膜浮腫、肺水腫や循環不全などの合併症を起こすことがあるため、腫瘍を積極的に触ったり、揉んだりといった直接的な刺激は避けるべきです。

不完全切除例の局所再発例は23,3%となっており、不完全切除でも必ずしも再発するというわけではなさそうです。

c-kit遺伝子を標的とした分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)の有効性が報告されています。遺伝子変異検査の結果に基づき使用を考慮します。

皮膚肥満細胞腫に対する臨床ステージ分類

ステージ 基準
ステージ0 不完全切除(顕微鏡学的に)された単発の腫瘍で局所リンパ節に浸潤無し
ステージ1 真皮に限局した単発の腫瘍で局所リンパ節に浸潤無し
ステージ2 真皮に限局した単発の腫瘍で局所リンパ節への浸潤有り
ステージ3 多発性の腫瘍、または大型で浸潤性の腫瘍で局所リンパ節への浸潤有り、または無し
ステージ4 遠隔転移または全身性に浸潤している腫瘍すべて

現在はPatnaikの組織学的グレード分類が一般的に使われ、悪性度に応じ3段階に分けられています。グレードは周囲組織への浸潤度、有糸分裂指数、細胞異型性、顆粒の状態などによって決まっている。グレードⅢが最も悪性度が高いとされています。

Patnaikの分類

グレード 組織学的特徴
グレードI 真皮に限局
分化し豊富な細胞質内顆粒を持った肥満細胞腫瘍による壊死や水腫は少ない
グレードII 真皮深層あるいは皮下組織にまで広がりをみせる
分化の低い肥満細胞で、細胞質内顆粒は様々な状態を呈す
核分裂像は0-2/高倍率1視野比較的広範に渡る壊死や水腫、間質の変性が観察される
グレードIII 皮下組織まで深く広く浸潤している状態 分化の低い肥満細胞で、細胞質内顆粒は目立たなく、頻繁な核分裂像(3-6/高倍率1視野)、また著しい核異型がみられる 広範囲に渡る壊死や水腫、間質の変性が観察される

このグレード法は真皮から発生した腫瘍の範囲を基準に含んでいるため、皮下組織のみに発生した肥満細胞腫には用いる事ができません。

Kiupelの分類

細胞形態と予後判定を基にして分類が再評価されたものです。

低グレードと高グレードの二段階表記が特徴です。
以下に示す特徴のうち一つでも当てはまると高グレードと評価される。

高倍率10視野の核分裂像が七個以上
高倍率10視野の多核(核が三個以上)細胞が三個以上
高倍率10視野の奇怪な核が三個以上
巨核細胞が10%以上

予後

手術後の予後に影響するものとして「完全切除が出来たかどうか」「組織学的グレード」「臨床ステージ」等が関係します。
ボクサー、パグ、ゴールデン、レトリーバーは比較的予後が良い犬種と言われています。

猫の肥満細胞腫

猫の肥満細胞腫とは?

皮膚、腸管、肝臓がよく発生する場所です。また発生部位により腫瘍の影響が異なります。また、内臓に発生した肥満細胞腫が皮膚へと転移するケースも見られます。 猫の皮膚肥満細胞腫は、頭部、頚部に発生が多くみられます。

シャム猫は肥満細胞腫がよく発生する種類です。(因みに乳腺腫瘍もシャム猫は発生しやすいです。) 性別による差はありません。また年齢も関係ありません。
消化管にできる腫瘍としては3番目に多いという報告があります。特に小腸に発生するケースが多いようです。

また、脾臓に発生する腫瘍では肥満細胞腫が最も多いと言われています。

検査・治療

猫の肥満細胞腫の診断は細胞診や全身的な影響の有無を確認するための探査的な胸部・腹部のX線および超音波検査など、全身状態の評価が必要となることもあります。

犬で用いられているPatnaik分類は猫では利用できません。「分化型・未分化型」の分類が行われます。

皮膚に発生した肥満細胞腫は外科手術による摘出が最も有効です。しかし、全身性の影響が出ていないかについては十分に評価する必要があります。特に単独ではなく多発性の場合は注意が必要です。

予後

猫の肥満細胞腫は、外科切除にて完治が可能であると考えられています。しかし、摘出後に違う場所に発生したり、多発性に出現したりすることもあります。一方で転移の可能性はそれほど高くないと報告されています。

脾臓の肥満細胞腫は外科切除により比較的良い成績をあげることができますが、皮膚や全身に転移を起こしている例では予後は厳しい状況となります。